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【2022年】コロナ禍における大学受験の傾向は安全志向・理高文低

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【2022年】コロナ禍における大学受験の傾向は安全志向・理高文低

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行は大学受験の傾向にも大きな影響をもたらしました。移動範囲が限られること、経済的な打撃を受けた家庭が多いことなど、生活基盤に大きな変化が見られたためです。

今回は、コロナ禍以前とその後における大学入試でどのような変化が見られたのか、また今後、新型コロナウイルス感染症が沈静化する場合はどんな影響が考えられるのかを解説していきます。

大学受験における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響

新型コロナウイルス感染症により、大学受験にはどのような変化が見られたのでしょうか。コロナ禍の影響が多く見られた2021年度の入試傾向は「3C」であったと分析されています。

3つの「C」とは「Compact(身の丈にあった安全志向)」「Conservative(保守的)」「Cheap(安価で利便性重視)」のことです。これに志望学部を分析した「理高文低傾向」を加えると、コロナ禍における大学入試の大まかな傾向がわかります。

ひとつずつ見ていきましょう。

安全志向が高まり、通学距離も受験する大学の数もレベルも「Compact 」に

まず、1つ目の「C」である「Compact」についてです。この「コンパクト」は「コンパクトな通学距離」、「受ける大学の数がコンパクト」、「レベルもコンパクト」だと言われています。

「コンパクトな通学距離」についてですが、これは一言で表すと「地元志向の高まり」になります。新型コロナにより行動が制限され、長距離移動に不安を覚える人が増えたことで、今までなら大都市に進学していた層の学生たちも自宅から通える地元の大学を目指すようになりました。

次に「受ける大学の数がコンパクト」であることですが、これは「安全志向の高まり」によるものだと言えます。コロナ禍において、受験生たちはオンライン授業の導入や度重なる休講を経験しました。例年だったら数多く受けられているはずの模試ですが、その受験回数も減った学生がほとんどです。

そのため、自分の学力を把握しきれない、また自分の学力に自信のない受験生が多く、「確実に受かる大学だけを厳選して受ける」という傾向が強く見られました。これに伴い、早期に進学の決まる推薦入試(総合型選抜含む)の人気も高まっています。

3つ目の「レベルもコンパクト」については「受ける大学の数がコンパクト」であることと連動しています。例年ならチャレンジ校として多くの学生が受験するような難関大学の受験者数は軒並み減少しました。代わりに確実に合格できるレベルの大学を受験する学生が増えています。

入試改革の行われた大学の受験を避ける「Conservative」傾向

大学生キャンパス、入試改革の行われた大学の受験を避ける「Conservative」傾向

次に、2つ目の「C」である「Conservative」についてです。この「保守的な」傾向は、入試改革の行われた大学の受験者数減少という形で強く表れました。

例えば2021年、青山学院大学では個別学部日程の志願者数は43%減、早稲田大学でも全体で12%の志願者減となっています。早稲田大学の志願者は、1970年代半ば以降10万人を下回ることはありませんでしたが、2021年は9万人台にまで落ち込んでいます。

入試改革が行われると出題傾向が変わり、事前の対策がしにくくなります。1つ目の「Compact」で説明した通り、コロナ禍における受験では「安全性」が大きなキーワードなので、「受かるかどうかが確実でない」大学は人気を落とすこととなりました。

この保守的な傾向はかなり強く、例えばコロナ対策のために受験方法を変えたり、共通テストの利用方法を変えた学校の受験者数は減少しています。

逆に、学内併願がしやすい、民間の検定試験の結果を入試に導入するなど、より学生が安心して受験できる対策をとった大学の受験者数は減少せず踏み止まりました。例えば、「1入試2出願」制度を導入した関西学院大学などでは、逆に受験者数が増加する傾向もみられました。

保護者の経済的影響を受け、より「Cheap」な受験に

続いて、3つ目の「C」である「Cheap」についてです。「Cheap」には、「安さ重視」の他に「利便性重視」の要素も含まれます。

コロナ禍において、経済的に打撃を受け、収入の減少した家庭が増えました。そのため、「より安く」受験できる大学が人気を集めています。

受験料免除や減免措置をとった大学は受験者数が増加しました。例えば、2021年の受験料を10,000円に減額した大阪産業大学や、 大学入学共通テスト利用入学試験の受験料15,000円の免除に踏み切った千葉工業大学は軒並み受験者数が増えています。

また、入学後のコストパフォーマンスへの意識も高くなっています。「学費が安い」「学内の奨学金制度が充実している」などの他に、早期から「対面授業実施」を掲げた大学の受験者も増えました。

就職に強い理系人気に拍車が!「理高文低」傾向がより顕著に

この「3C」に加え、コロナ禍では「理高文低」の傾向も顕著に見られています。

2021年の私立大学志願者の傾向を分析した資料によると、2020年と比較するとどの学部も志願者は減少しました。しかし、医学系統や理・工学系統の受験者数は前年比―10%以内に志願者減が収まっているのに対し、文系学部は―15~25%減と大きな差が見られます。
参考:https://eic.obunsha.co.jp/analysis/202106/


就職に強い理系に人気が集まる傾向はコロナ禍以前からも見られていましたが、コロナ禍で経済が打撃を受け、不況を目の当たりにするとよりその傾向に拍車がかかりました。

特に医学部や薬学部をはじめとする医療関連の学部は連日の報道の影響もあり、「将来、自分も力になりたい」と考える意欲の高い学生の人気を集めています。関西圏では2022年入試において、創薬科学科と併願可能になった立命館大学の薬学部の志願者57%増が特に目立っています。

また、リモート授業などでITの必要性が再確認されたことにより、情報系の学部も受験者数が増加しています。

その反面、文系学部はコロナ禍で急激に人気が下がりました。文系の花形であった国際系の学部や語学系の学部は特に大きな打撃を受けています。

関西圏の中学受験でも大学受験と同様の傾向が

コロナ禍で起こった大学受験の影響は、中学受験にまで及んでいます。特に、関西圏の中学受験において「安全性」を意識する傾向が顕著に見られました。

灘中や甲陽学院中などの男子難関校、神戸女学院中や四天王寺中などの女子難関校では軒並み受験者数が激減しました。 例えば、前年に比べて甲陽学院中は66人、神戸女学院中は43人、志願者数が減っています。

反対に中堅校以下では受験者数に増加傾向の見られる学校が多くありました。「無理せず受かる学校に手堅く合格する」という意識がはっきりと表れています。例えば男子中堅校である洛星中では40人、女子中堅校である甲南女子中では24人、志願者が増加しました。

中学受験全体の受験者数はコロナ禍でやや減少しましたが、「こんな激動の世の中だからこそ、しっかりした教育を」と考える家庭が多く、減少数は予想をずっと下まわった印象です。

全体の受験者数が変わらない、もしくは今後ゆるやかに増加し、その上で安全性を意識する傾向が続くと、中堅校以下の人気はさらに高まるでしょう。

新型コロナが落ち着きを見せることで新たな変化も

大学入試、新型コロナが落ち着きを見せることで新たな変化も

皆がコロナ禍に慣れてきて、影響も沈静化してきたことにより、この「3C+理高文低」傾向にも新たな変化が見られています。

それは、「難関大学における地元志向の緩和」と、「文系における法・経済・経営・商学部での志願者数回復」という2つの傾向です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

難関大学における地元志向の緩和傾向

まず1つ目の影響は、難関大学における地元志向にやや緩和傾向が見られることです。3回のワクチン接種により移動制限などが解除されたことで、都市部の難関大学の受験者数や模試での希望者数が増加しています。例えば、2022年度の青山学院大学や法政大学は前年比+19%、東洋大学でも前年比+9%の志願者数増加が見られました。

入試改革を行った大学に関しては、改革のあった年こそ受験者数が減少しましたが、傾向のはっきりした翌年からは受験者数が戻ると考えられています。

これは、関東にも関西にも見られる変化で、このまま新型コロナの沈静化が進めば、この傾向もさらに進むことでしょう。

ただ、難関大学以外、中堅以下の大学では、まだまだ地元志向が強い状態です。地方の大学がコロナ禍前に比べ人気を回復しているのに対し、都市部の中堅以下の大学は依然苦戦を強いられています。

法学部・経済学部・経営学部・商学部では志願者数回復

2つ目の影響は文系における法学部、経済学部、経営学部、商学部の志願者数に回復が見られることです。コロナ禍で、理系人気が極限まで高まったことにより一時的に文系が敬遠され過ぎたという見方が多く、それが元に戻ったと考えられています。

文系の就職活動において根強い人気を誇る職種に「公務員」があります。不況に強いため、コロナ禍で経済的な打撃を経験した学生たちからの支持を集めています。

公務員受験には法律の知識が欠かせませんので、公務員受験を考えている学生の多くが法学部に戻ってきました。

同じく経済的な影響を受けたことでお金の動きに強い興味を持つ学生が増え、その結果、経済学部や経営学部、商学部の志願者も徐々に増加しています。これらの学科は私学全体でこそほぼ前年同様の志願者数ですが、青山学院大学の経営学部は前年比+23%、一橋大学の商学部も前年比+25%と、難関大学で人気回復の兆候が見られます。

コロナ禍において、動画サイトなどを楽しむ人々が増えたため、その中で経済について発信する人気YouTuberなどから影響を受けた学生も多いと考えられています。

「自分でしっかり稼がなくてはいけない」という危機感が、理系・文系志望共に多くの学生に見られる傾向と言えるかもしれません。

ただ、同じ文系でも国際学部や語学関係の学部は未だに苦戦を強いられています。国際学部や語学関係の学部の多くは、「在学中に海外留学のチャンスがある」ことを売りにしていました。しかしコロナ禍によって留学できる可能性が限りなく減ってしまったことにより、魅力が激減したと考えられています。

実際、コロナ禍の直前に受験し、国際学部に入学したものの留学のチャンスがなくなってしまい、「それなら意味がない」ということで医療系など、より実践的な学部を再受験した学生もいるほどです。

海外への渡航状況が安定し、学校内の留学システムがコロナ禍前に戻るまでは、国際学部や語学関係の人気低迷は今後もしばらく続くことでしょう。

まとめ

大学入試合格に向けて勉強する高校生

以上、大学入試における新型コロナウイルス感染症の影響をお伝えするとともに、今後、受験はどのような傾向に変化していくと考えられるのかを解説しました。

大学入試では全国の学生の動向が受験全体に大きく関わってきます。特に難関大学においてこの傾向は顕著です。

これから数年間は、コロナ禍の影響を受けた「3C+理高文低」傾向がしばらく続きそうですが、コロナ禍以前に人気であった学部や、都市部の大学の受験者数が徐々に回復すると考えられます。

学力アップはもちろんのこと、受験においては必要な情報を日々更新することも欠かせません。自分の目標とする大学や学部が、入試においてどの位置にあるのかを客観的に理解し、受験対策を立てましょう。

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